春学期スタート、研究室選び

ついに春学期がスタート。

前のブログにも書いたけれど、今学期取ることになったのは Life Sciences 50b, Artificial & Natural Intelligence, Human Ethics, Optics in the Visual Arts の4つ。Optics in the Visual Arts は、Freshman Seminar という一年生しか選択できない授業の一つ。前から一年生のうちに Freshman Seminar を取りたいと思っていたので、取ることができて満足。

 

今週受けた授業の多くでは Introduction がメインで、本格的な内容には入らなかった。なので、今回のブログでは今週のハイライトだった研究室探しについて書く。

研究室探しは冬休み中に複数の研究室にメールで問い合わせるところから始まった。確か4つの研究室に問い合わせた。全て non-coding RNA に関する研究室。そのうちの一つには、まだ研究室の規模が小さく学部生の面倒を見られるポスドクがいないため受け入れられない、と断られた。もう一つには完全に無視された。無視する意味がわからない。残りの二つ、 Walsh Lab と Ruvkun Lab からは返事が来た。今のところは、その二つの研究室のポスドクの方や教授とお話をしている段階。 

  • Walsh Lab ざっくり
    • non-coding RNA が脳の発生にどう関わっているかを iPS 細胞から作った人工的な脳 organoid 等を使って調べている。二人のポスドクの方が研究に参加していいよとメールしてくださり、Zoom で話した。
    • 最初に話した Janet さんは、organoid を使うというより面白そうな non-coding RNA 自体を探す研究を主に行っている。Janet さんの紹介でメールをしてくださった Xuyu さんは自分が PhD 時代に開発した organoid を使った研究をしているよう。私は高校時代から発生や iPS 細胞から作った人工組織に興味があったうえ、神経科学は未解明な部分が多くて面白そうだと思っていたので、Xuyu さんの研究内容と自分の興味はフィットしていると思った。Xuyu さんが言っていたことが面白かったので後ほど詳しく書きます。
    • 来週 Pricinpal Investigator(PI)の Walsh 教授ともお話する予定。(すごそうな人なので正直怖い)これで最終的に Walsh Lab に入られるか決定するのだと思う。
  • Ruvkun Lab ざっくり
    • non-coding RNA が C. elegans の抗ウイルス機能にどう関わっているかを調べている。このラボの PI の Ruvkun 教授は、miRNA である lin-4 の第一発見者だったそうで、RNA 研究の先駆者という感じ。
    • Walsh Lab よりも親切な雰囲気だった。古くからある実績のある研究室なので、この研究室も権力を持っていそうだが、Walsh Lab のような、最先端の技術を駆使しながら、競争率の高いフィールドで勝ち残るぞ!的なアンビシャス(& competitive)な雰囲気はなかった。
  • Xuyu さんとの面談
    • あまり研究室のファンディングのシステムはよく知らないけれど、Walsh Lab はメディカルスクールの中でもかなり prestigious でファンドが豊富なラボだそうだ。ラボのウェブサイトからも強そうな雰囲気が滲み出ている。
    • Xuyu さんが面談で聞いてきた質問は結構面白かった。「学部からハーバードってすごいけど、なんで受かったんだと思う?」という質問がここで聞かれるとは思わなかった。それに対して私は「運が良かった」「ambitious な性格のお陰で色々な努力を継続してできた」と答えた(運が良かったのは大きいと思うけど、この場面でそう答えなくても良かった気はする)。すると「ambitious だとわかるエピソードとかある?」と聞かれた。こういう掘り下げ方をするのか、と思った。実績や研究経験、取っている授業などはもちろん聞かれたが、性格や特性のようなものを知ろうとしているようだった。Xuyu さんは質問の仕方が上手だと思ったが、インタビューをする側に立ったことはあまり無いらしい。驚き。
    • 質問の後は Xuyu さんが自分の研究について話してくれた。PhDの時に脳の organoid を開発する研究を行ったそうで、そのモデルは現在開発済みの人工脳組織の中では最も精度の高い(本物のヒトの脳に近い)ものらしい。すごいね。今ほぼ完成している研究では、その organoid を使ってある脳疾患に関わる遺伝子について調べているらしい。ただ、その研究には新規性はなく、次に行う予定の研究(これが non-coding RNA の脳の発生における働きを調べる研究)で大きな成果を出したいと思っているらしい。 low risk, low return な研究を先に行い確実に何らかの成果を残せるようにし(これが今の研究)、その後よりチャレンジングで面白い研究を行う、という戦略だそうだ。こんなに戦略的に研究するものなのか、と感心した。
    • 彼は企業に就職する気は一切なく、迷ったこともないそうだ。私は Twitter で色々な研究者をフォローしているが、こんなに自信のある研究者は初めて見た。早い段階で成果を出していたからこんなに自信があるのか?実家がお金持ちかなんかで、アカデミアで失敗したら食っていけないという心配をしていないからなのか?何でだろうね??
    • Walsh Lab には多くの学部生が応募していたそうだが、中でも、「Med School ではなく PhD 志望(これはすごく大事らしい)」「他の部活にあまり入っていなくて研究に時間を割いてくれそう」「そもそもハーバードの学部生だから優秀そう(個人的には、ハーバードの学生だから優秀、というのは偽だと思っている)」「研究をすること自体に興味を示している」「学部一年生である」といった条件に当てはまっていた私は、研究室に招き入れる学部生として excellent candidate だと言っていた。多分研究室に入れてくれると思っていいのかな?
    • 上記の通り Xuyu さんは招き入れる生徒が「学部一年生である」ことは都合が良いと言っていた。より知識を持っている高学年の生徒の方が良いんじゃないの?と最初思ったが、学部一年生だと、1年間徹底的に研究のトレーニングをさせた後残りの3年間働いて成果を出してくれる可能性が高い、と説明してくれた。学部生を育てるのは investment だと言っていた。自分が育てた学部生が後々成功するとメンターだった自分の実績になるとも話していた。納得はしたが、まあまあプレッシャーがあるなと思った。何とかなるだろうけど。
    • Investment という言葉を使っていたところからもわかるように、話している時に直接的な表現を使う人だった。私からするとオブラートに包んだ表現は理解しにくいのですごく話しやすいと感じた。また、具体的に何を言っていたか忘れたが、冗談を会話に入れてくる人だった。真面目な話に冗談を入れるのはアメリカ人らしい気がする。

最初は Ruvkun Lab と迷っていたが、Xuyu さんの研究内容が自分の興味と一致していたので、Walsh Lab に入ることができるといいなと思う。Xuyu さんからすると、週5日、1日3時間くらい研究室にいてくれるのが理想的らしい。結構多い気はするが、授業は高校の時のように1日に7時間あるわけではないので時間は作られそうだし、最先端の実験施設で iPS 細胞からできた脳を生で見られると考えるとそのくらいの負担は全然気にならない気がする。

 

研究の話と少しずれるけれど、Janet さんや Xuyu さん、Ruvukun 教授と話してみて、やはり色々な人と話すのは面白いと思った。特に初対面の人と話すのは面白い。長期的な計画を立ててコツコツ実行するタイプ、あまり深いことは考えなさそうなタイプ、少し自信がなさそうなタイプなど、人の性格は本当に多様性に富んでいる。今週は研究室の外では、仲の良い日本人の同級生や、ハーバード・イェール(11月に開催されたフットボールの試合)に一緒に行った友達、Harvard Business School に通っている人などと話す機会があり、その時も毎回みんな価値観や話し方が違って面白いと実感した。今学期は、新しい知り合いをどんどん作ることを目標にしたい。

f:id:bigvalleysky:20220131094940p:plain

本文とは関係ないけれど雪が降りました☃️

 

キャンパスに戻りました

昨日の夕方、無事アメリカに到着。

大型Uberに友人3人(日本人の同期)と乗って空港から大学へ移動した。料金は割り勘にして一人あたり10USD。自分一人でUberに乗ると30USD~と高くついてしまうので、これからは友達と乗ろうと思った。

友人がケンブリッジの風景を見て、"It's weird how this place(大学)feels like home." と言った。わからなくもなかったが、私にとってはまだ東京の家が圧倒的に "home" だと感じられた。いつか大学の方が 「"home" さ」が強いと感じられる日が来るのだろうか。

一緒に帰ってきた友人とレストランでパスタを食べた(パスタの量が多く値段も高く、アメリカに帰ってきたな、と感じた)。食事中はずっと日本の良さについて話していた。その後は、すぐ寮に帰ってシャワーを浴びて寝た。

 

次の日(今日)は10時くらいに起きた。時差ボケで明け方に起きてしまうかなと思っていたけれど意外と遅くまで寝ていた。

f:id:bigvalleysky:20220122055644j:plain

これは今朝の気温。-12度なんて表示は初めて見た。

寒すぎたので12時までベッドの中にいたが、ずっとここにいてはまずいと思い、身支度をしてアネンバーグ(食堂)へ向かった。外に出てみると意外と寒くなかった。

f:id:bigvalleysky:20220122061014p:plain

これはアネンバーグの外の景色。天気が良かったので気分が良かった。アメリ東海岸に来てから天気によって気分が大きく左右されることを実感するようになった。毎日天気と自分の気分を記録し続けたら面白いかもしれない。

現在はオミクロン対策として食堂内での食事は禁止されており、テイクアウト形式になっている。パンとスープを容器に入れて Science and Engineering Complex という建物へ20分ほど歩いて移動した。

f:id:bigvalleysky:20220122063455p:plain

Science and Engineering Complex には橋を渡って行く。

Science and Engineering Complex は研究室、授業用の教室、作業部屋がある建物。この建物は綺麗で、利用者が少なくコロナ的に安全そうなので今学期はよく来る予定。今学期とる授業の課題を少しやった。授業が始まる前に既にに課題が出ているのは驚いた。

取る授業はこちら。

  • Integrated Science (Life Sciences 50b)
  • Artificial & Natural Intelligence (General Education 1125)
  • The Science of Optics in the Visual Arts (Freshman Seminar)
  • Human Ethics: A Brief History (Philosophy 18)

LS50は一学期も取っていてよかった。今学期は神経科学や発生生物学、進化生物学なども扱うようで、生物ヘビーになりそう。

Artificial & Natural Intelligence も神経科学を扱うようだ。神経科学は馴染みのあるトピックなので安心して受けられそう。ただ、プログラミングがあまり得意ではないので、プログラミングの課題が出すぎないことを祈る。

Freshman Seminar は12人しか受けられないので、他の履修者と仲良くなれそうで楽しみ。

Human Ethics の授業は哲学の授業という分類に入っていた。すごく評価が高かったので期待できる。

どれも時間をかけて決めた授業なので、1/24の授業開始が楽しみ。